外部フィルターのお話



私のブログで「外部フィルターに対する所見として、誰もが気がつかなかった事を別段HP上に記事として後日載せていきたい・・・・・・・」と予告させて頂き、海水魚で外部フィルターに興味のある人は少ないと思いますが、本記事にて述べようと思います。

まず、結論から言います。

海水魚に「外部フィルターは向かない」と言う意見ですが、正しいと思います。そして、ある意味、間違いでもあるとも言えます。

但し、誤解のない様に申しあげますが、海水魚の水槽では何も外部フィルターをお奨めしている訳ではありません。
外部フィルターしか選択肢がない場合につき、使用方法についての注意を喚起したいだけなのです。
使いこなせば、他にない長所もあると言う事です。

また、珊瑚水槽でも強制通水のフィルターを使わないナチュラルシステムから強制通水のZEOvit フィルターを使ったZEOvit システムが流行出しています。
強制通水のフィルターは、それなりの長所がある訳です。


理由:
なぜ向かないのか?


それは、ベテランの方でも誤解されているかも知れない位、初心者の方には扱い方が理解しにくい面があるからです。
ショップでの環境と一般家庭での環境との違いも考慮する必要があります。
一般的に、ショップで海水魚の水槽を維持するのにオーバーフローのウエット濾過水槽が維持しやすい等、家庭より恵まれた環境ですからショップは外部フィルターを使って維持するとは考えにくいと思います。
事実、その様な海水魚ショップを見かけた事がありません。
ですから、外部フィルターを使うのは淡水の水草水槽か?もしくは家庭で使用する場合が考えられます。
淡水での水草水槽は、少数の小型魚とたくさんの水草で構成されますが、水草は硝酸塩を吸収して成長する事と二酸化炭素を逃がさない為に水の循環に必要な1台の外部フィルターが使われます。
また、水草水槽でも嫌気性濾過を期待する為にエーハイムクラシックなどの外部フィルターを4台使用する方法もあります。http://www.aquagarden.co.jp/menu.htm

海水の水槽では淡水とは違った側面がある為、詳細については下記ページにて述べていますが、外部フィルターの誤解を解くのにかなりの量の文章を書かないといけません。


外部フィルターについての誤解

濾過についてのお知らせ

ですから、それらを防ぐ意味でも、初心者には最初から外部フィルターは向かないと言った方がトラブルを未然に防ぐことが出来るかも知れません。

但し、いつまでも理解不足だと他の面でもその可能性があると言う事になり、自然と言うものを少しでも一歩でも一ミリでも正しく理解していく事が大切だと思います。

たとえば、私でもフィルターローテーションシステムで使われる外部フィルターのウールが詰まるのは、有機物などのゴミ類だろうと思っていた時期がありました。
現在の90センチ珊瑚水槽ですが、1本500ミリリットルの外部フィルターでもその前段にウールとスキマーの処理をして物理濾過をして、外部フィルターには有機物等のゴミ類がいかない様に設定しています。
ところが、それでも内部のウールは時間の経過と共に詰まり、流量が減少していき嫌気性濾過になり最後は通水しなくなります。

こう言った事象に対して、私も考えを改めざるを得なくなりました。
それ程、外部フィルターに対して理解のある私でも残念ながら誤解していたと言う事になります。

そこで、外部フィルター内のウールは有機物等のゴミ類でも詰まる事もありますが、改めて元気なバクテリアの塊(コロニー)で詰まるかも知れないと言う事も追加せざるを得ません。
通常は、外部フィルターの前段にウールボックスやスキマーを通した海水で循環することは無く、水槽内の海水をそのまま循環するのが普通ですのでどうしても有機物等のゴミ類で詰まると認識してしまうのだと思います。

この様に、色々な事象に対して誤解もしやすく正しく理解すると言う事がいかに難しい事か?痛感させられた出来事でした。


チョウチョウウオなどの海水魚飼育では?

物理濾過としては、チョウチョウウオ飼育のベテランであるうちださんが、白点病予防として完璧なウールボックスの設置を提唱しておられています。
                                       ↓
                           http://www.h6.dion.ne.jp/~umiumi/index.html

私も過去に白点虫除去フィルターを作った事がありますが、これは完璧なウールボックスで無ければならない事が知らなかったことによります。
また、それ以前にフェルトによる使用方法もある事は知っていましたが、まだ確信がありませんでした。

たまたま、ある方から60センチ水槽のシステム構築の相談を受け、今ある機材での構築であれば、生物濾過に外部フィルター、物理濾過に淡水用上部フィルターの組み合わせが良いだろうとアドバイスさせて頂きました。
その時点ではまだ確信があった訳ではなく、その方は60センチ水槽で見事チョウチョウウオ飼育に成功され珊瑚共存ではありませんが、初心者の方がチョウ飼育するにあたってこの様にすれば飼えると言う成功例でした。

そこでフェルトによる白点虫の除去の効果があると言う事を再認識致しました。

この事から@白点虫除去フィルターA淡水用上部フィルター(フェルト)Bドライ形状のウールボックスのフィルターのそれぞれが、白点虫の物理濾過に使えると言う共通点があります。

但し、私の考案した白点虫除去フィルターは欠点も多く難しいので、残るはA淡水の上部フィルターとの(フェルト)組み合わせとBウールボックスの組み合わせが現実的で、やはりウールボックスが推奨されるべきだと思います。


オーバーフローの長所と欠点

生物濾過としてはオーバーフローのウエット濾過方式がもっとも推奨されていますが、現時点では海水魚飼育ではもっとも無難だと思います。
さらに、この方式だとウールボックスの組み合わせが容易になります。

但し、欠点もあります。
オーバーフローをやって見て思いましたが、そこへ生体が吸い込まれるなどの事故が多い様です。
私のところでは、過去に120センチ水槽でオーバーフロー方式で、ウエット濾過槽を60センチ水槽の3層式で対応していた時期がありました。
その上に自作のウールボックスでしたが、魚が落ちれば気がつかないとそのまま死亡してしまいます。

そこでメイン水槽のすぐ下にウールボックスではなく、サンプにしてサンプの次にドライ形状のウールボックスが好ましいのではないかと思います。
あるショップの海水水槽もその様な構造になっていて、つまり、オーバーフローの下はサンプになっていてその隣が生物濾過槽になっていました。
残念ながらウールボックスはどの辺りだったのか?は良く覚えていませんが、色々と良く考えられているなあと感心させられました。
こう言ったワンクッションを置いて予防する事も大切ではないかと思います。

他に、オーバーフローの上部にスリットを入れる事によってある程度、生体の落下を防ぐことも可能ですが、掃除しないとスリットが詰まる事もあります。

また、オーバーフロー用濾過槽は一つの水槽としての単位ですから、もし濾過槽にトラブルがあり濾過材の交換が必要な事態が起きれば対応出来ない、リスク分散が出来ないと言う欠点もあります。
その点、外部フィルターが4台あれば、リスク分散が可能になります。

そう言った事が無ければ、ウエット濾過槽は年単位でかなりの長期間で長く使えると言うのが長所になると思います。


外部フィルターの長所と欠点

但し、外部フィルターと言えども物理濾過の問題があり、別途物理濾過の問題を解決した上で外部フィルターの設置になると思います。
私のところでは、過去に120センチ水槽でオーバーフロー方式で、ウエット濾過槽を60センチ水槽の3層式で対応していた時期があり濾過的には問題ありませんでした。
ですが、同じ濾過材を長く使っていると濾過材にリン酸カルシウムが沈殿する為、リンの多い水槽になる恐れもあります。
そこで濾過材の交換が必要な時に濾過材の交換が出来ない為、どうすれば良いか?悩んだ事があります。
これが淡水水槽であれば、少しずつ濾過材の交換をしても問題ありませんでしたが、海水水槽のウェット濾過槽では濾過材をいじると間違いなく白点病が蔓延します。

濾過材の交換をするならバスケットの様な構造のものに濾過材を入れ、バスケットそのものを交換すれば濾過材を交換する事になりますが、塩ビやアクリル水槽だとフチがついていますのでそのフチがバスケットの交換の際に邪魔になります。
オールガラス水槽の様にフチが無い方が良いのですが、濾過槽の強度が劣ってしまい使い物になりません。
仮に濾過槽内に4個のバスケットを作ってローテーションにより1個のバスケットを外しても、持ち上げたバスケットから海水がこぼれますので結果的に白点虫の活性化を促す恐れがあり得ます。
従って、パワーフィルターの様なバケツ状の容器にバスケットがあると言う様な構造が好ましいので、それを4本用意してローテーションする方が良いのではないかと思います。

120センチ水槽であれば、テトラEXパワーフィルター120タイプを4台取り付けるのが好ましいのですが、そうしますと濾過材の交換の容易さがメリットになってもデメリットとして大変高価になります。
まして、120センチ水槽以上の大きさになれば、それに応じた大きな外部フィルターがあまり無く、完全にオーバーフローで対応した方がよいことになります。

この様に海水魚もしくは珊瑚水槽を外部フィルター1台で維持するには無理があり、いつかはフィルター内の掃除もしくは濾過材の交換が必要になる為、オーバーフローウエット濾過槽の様な年単位での維持には向きません。
外部フィルターはメンテナンスを前提にしないといけませんので、数台は必ず必要になります。



海水魚飼育での硝酸塩の還元濾過は?

硝酸塩対策は、別のところでも詳しく述べていますので、ここでは簡単に述べます。

外部フィルター内部の構造には2種類あります。
ひとつは、エーハイムクラシック等のコンテナの無い?もしくは一体型のコンテナの外部フィルターの構造であれば、自然と流量が減少して還元濾過になっていきますが、テトラEXパワーフィルターの様なコンテナが分割型の外部フィルターですと、コンテナ同士の隙間からリークがある為、自然と流量が段々と減って行くという様な事はならず、1年以上経過してもその流量が変わらず還元濾過になりませんでした。

その結果、外部フィルターのローテーションによる魚水槽としての使い方であれば水槽内の有機物のみでは硝酸塩の還元能力不足であり、やはり炭素源を使用した還元フィルター又は還元濾過槽、別名ナイトレイトフィルターを別途追加して使用する必要がありました。
4台の外部フィルター(合計28リットル)では硝酸塩の還元能力が不足とは言え、濾過材の洗浄による病気などのトラブルを回避し、濾過材の交換をする事で濾過能力の維持、病気予防をする事が出来る様です。
(当時 (2005年8月12日)のチョウチョウウオ達は、12センチクラスが3匹、5センチクラスの2匹でした。
生分解性プラスチックを使用する嫌気フィルター3台(合計3.6リットル)で硝酸塩20mgでしたから、水道水の硝酸濃度は6〜8mgですから上等な数字だと思います)

硝酸塩対策は色々とある様ですが、魚水槽でのオーバーフローウェット濾過ではオーバーフローは濾過の為にある訳ですからポンプは主にマグネットポンプが使われますが、外部フィルターをメイン水槽に連結すればオーバーフロー用のポンプはマグネットポンプの様な強力なポンプの必要性が薄れていきます。
(但し、有機物等のゴミが出来るだけストレーナーに吸い込まれないような工夫が必要ですが、ここでは詳しく述べません。)
下の水槽がサンプであれば、水量の確保とデトリタス沈殿、ヒーターやその他の機材をまとめて入れるのが目的になって来ますから、それほどの強いポンプが要りません。
メイン水槽での水流付与であればパワーヘッドのようなポンプでも十分で、その方が電気代も安く済みます。


私のところでは?

良かった点と改良しておきたかった点を述べておきます。
チョウチョウウオなどの海水魚水槽では、

過去の120センチのチョウチョウウオ水槽は、最初オーバーフロー方式で60センチ規格水槽の3層式のウエット濾過槽でした。
120メイン水槽に、底面フィルターと白点虫除去フィルターを連結してつないでいました。
つまり、沈殿した白点虫やゴミ類などは底面フィルターを通し、白点虫除去フィルターによって濾し取っていました。

次に改善した点は、
底面フィルターと白点虫除去フィルターはそのままで、4台のテトラEXパワーフィルター90タイプはメイン水槽に直接繋ぎました。
4台のテトラEXパワーフィルター90タイプの好気濾過が出来ている頃には、60センチ規格水槽の3層式のウエット濾過槽を取り外し90規格水槽によるサンプに変更し、様子を見ました。
問題なく経過し成功しましたので、90規格水槽によるサンプではなく45規格水槽によるサンプでも良かったかも知れません。


さらに改善するとしたら?
もしメイン水槽の底面フィルターがなければ、120センチ水槽であれば、安全を期して4台のテトラEXパワーフィルターは120タイプにした方が良かったかも知れません。

白点虫除去フィルターではなくて、ドライ形状のウールボックスを使うのであれば、45規格水槽によるサンプを2層式にして一方はサンプとして、もう一方はドライ形状のウールボックスの設置と言う方法をとるのだろうと思います。
45規格水槽の隣には、4台の外部フィルターの設置と言う方法をとったかも知れません。
チョウチョウウオの性格は、ヤッコとは違ってかなりの広範囲にわたって遊泳する魚の様です。
ですから、死滅回遊魚と言われる所以であり、狭い水槽での飼育には向いていないと思います。
また、餌の面でも人工餌だけでは難しい面もあり、狭い水槽での長期飼育には疑問がつくと言うのが正直なところです。
1匹10センチ以上の大きさであれば、たとえ120センチ水槽でも狭いのです。


ミドリイシなどの石珊瑚水槽では、
当然外部フィルターを使っての飼育は可能であり、貧栄養状態にする事も可能です。
要は使い方次第になりますが、3〜4台使用し1本当たりのタンク容量はもっと小さくしても良いと思います。
たとえば、現在流行しているZEOvit システムにしても、ZEOvit リアクターに使われるZEOvit は水量400 リットルあたり1リットルですから、それだけの量でもかなりの貧栄養状態の水質を再現出来るのです。

現在の私の珊瑚水槽では、照明の関係上、メタハラがなく思案している最中です。(LED照明が欲しいのですが、まだまだ発展途上の段階である為、T5蛍光灯の6灯を注文しました。)
主にLPS水槽になっていますが、1本当たりの外部フィルターの容量は500ミリリットルです。
昔、使っていたニッソープライムパワー20を4台使用していてミドリイシを飼えていた時代がありました。
硝酸塩は検出されず、リン酸はリン酸吸着剤を使用していた時代でしたが、当時のニッソープライムパワー20のタンク容量は2.5リットルあり、合計10リットルのタンク容量でした。
それが現在では1本あたり500ミリリットルを3本使用している訳ですから、合計1.5リットルの容量です。
珊瑚水槽では外部フィルターの容量が1/7になり、いかにコンパクトになったか?は分かると思いますが、それは魚水槽の様に餌をたくさん与える訳ではありませんので当然の事なのです。

それまでの外部フィルターはポンプの内蔵しているものが主流でしたが、ジェックスの「メガパワー」など現在フィルターからポンプを分離したセパレート設計タイプも存在しています。
ならばと言う事で、今回のフィルターローテーションでは3台の外部フィルターのタンクに対して1基のポンプで試しましたが、実践の結果、可能だと言う事が分かりました。
具体的には、90センチ水槽に対して外部フィルターは500ミリリットル(\100)を3個、ポンプはジェックスのイーロカのPF381(\1270〜\1580)を1個採用しました。
現在も稼動しております。



海水で外部フィルターを使用する際の結論

海水魚飼育で外部フィルターを使用するならば、必ず淡水の3倍の容量は必要。そして、最低でも2台以上は必要。別途物理濾過は必須です。
珊瑚飼育で外部フィルターを使用するならば、容量の小さいもので十分です。
嫌気性濾過のフィルターは、人工的に意図的なフィルターは何故か珊瑚によっては嫌うものがあり、好気性濾過とのバランスが取れた自然な嫌気性濾過を心がけるべきです。