ULNS(超低栄養塩環境)の考察
シーホークさんからのコメントなのですが、コメントにしては勿体無いので皆さんにも情報を分かち合いたく、彼の許可を得て記事にさせて頂きました。
この記事の文章については当方が責任を負うものとします。
シーホークさん、有難う御座いました。m(_ _)m(クロネコ)


ULNS(超低栄養塩環境)の考察

以前から念頭にはあったのですが、自然界での炭素源利用水素供与ミネラル供与等々などによる、バクテリア、細菌、微生物などでの食物連鎖によ る微生物共存世界に対して、人間の想像や考察だけで全ての有用微生物達へ、添加剤という形で個々に栄養分を与えるというのは まず不可能に近いのでは?と思います。

それでも日々、研究者の方々によって解明研究はされ続けている事とは思いますが、・・。  
ただし、目に見えないそれらの世界を水槽内に広げようと、人に考え付く、BP群たちに必要かもしれない栄養素やバクテリア自身を水槽に持ち込もうとする考え方自体は悪い方向の考え方だとは言えないと思います。 

自然と動物園、自然と水族館 双方の違いだと思いますが、アクアリストの水槽というのは後者になるでしょう。
今回の BPS(バクテリオプランクトンシステム)、ULNS(超低栄養塩環境)という新しい考え方は、アクアリウム(水族館)から自然への新たな挑戦とゆうことの始まりの第一歩である事は否定はしません。

TAKAさんの記事に書かれている様に、自然の水の残存栄養塩と水槽水のULNS(超低栄養塩環境)の完成形と言われる水の残存栄養塩は当然違いますが、 自然の海に存在して いるBP群と、水槽内に存在しているBP群とでは、規模も種も数も生存可能域の有無も違うのだろうと想像します。

ULNS(超低栄養塩環境)で主にあげている、PAOs やDPAOs等のリンを食べてそれ自身をスキマー等で取り除ける有益なBP以外にも、その他の多種のBP達が存在している限り、それらは当然、体格形成、 細胞維持の為に、主に窒素、リン、カリウムなどを使っていますので(あるいは食物連鎖で取り入れて)、本当の意味での自然の微生物リッチな水に栄養塩が枯 渇寸前なのは当然のことと思います。 

DOC(Dissolved Organic Carbon)についてですが、以前に書かせて頂いたと思いますが、河 川や工場排水などからの、炭素源に当たる汚染物質や、化学物質などの流入によって、 流入域の水質浄化微生物群の中での共存バランスを、ある種では増幅させたり、ある種では減退させたり消滅させたりして、微生物生態系を崩してしまうので しょう。 

水槽での魚の餌やフン、無脊椎動物の排泄物などの形で、溜まっていく蓄積リンを生物学的に除外することが出来るという考えが、BPSであり ULNSあるいZeovitS というアクアでの新しい提案ではありますが、決してPAOs(ポリリン酸蓄積細菌群)だけが、水中内のリンを利用している 訳ではないという事も忘れてはいけないと思います。

一端で一部の種のBPのみを増幅させてしまった場合に、微生物サイクルでの食物やエネルギーの枯渇に よって減退する微生物は、必ずしも否有用微生物達ではない可能性も充分に考えてBPSという考え方に取り組まないと、取り返しのつかない水質浄化微生物群 の崩壊を招く可能性もかなり高い確率で起きることになるでしょう。 
あるいは、ある種の病原菌の蔓延を起こす水槽も中にはある事と思います(私の殺菌灯 装備の水槽がそうでした;)。

「デトリタスの、炭素源その他の形での微生物の餌としての利用」ですが、魚の餌として持ち込まれた有機物や、水槽内の生物、 微生物などの排泄物の形での有機物は、好気域での出涸らしの残り物の沈殿物を指しています。

これらは好気域でのカスなのは違いないのですが、これが広い意味での生物圏、例えば、好気域の他に貧酸素域、偏性嫌気域(無酸素域)に持ち込まれると「待ってました」とその貧酸素域も含めての好気域ではない環境で の生き物達に、エネルギーや他種との共生の為の餌として利用され、好気域での有機物サイクルと同じように循環、消費されていき、最後には無機な物質として 海底の土壌に鉱物として蓄積して固められ、また 火山活動で地上にとって帰ると言う自然サイクルも大きい意味ではあります。

ただ、水槽という小さなホビーボックスの場合は、大自然の窒素リン循環を全て持ち込む訳にはいきませんので、我々が考えている構想としては、脱窒濾過で硝酸塩を窒素ガスに変えて放出するという過程を持ち込まなくても、BPS理論で硝酸塩の処理を出来るので あれば、偏性嫌気域である脱窒槽での働きは今回は除外して考えて、「好気域、貧酸素域(酸素の流入や硝酸塩の流入も起こるが、嫌気域に近い領 域)」を水槽内あるいは水槽外の どこか(主に濾過槽や底砂など)に作って、その場所場所に住まわせたBP達に、場所にあった働きをしてもらい、その結果として、今流行し だしている「ULNS」などで、アクアリストに添加剤として使われるであろう「アルコール、糖、酢」などの代わりに、BP達に自分達の餌を(他種の共存す るBPに与える為の餌として) 作りださせるようにすれば、人間のサジ加減での過剰炭素源の添加や、予期せぬ危険化合添加物などによる危険を回避出来るのではないか? ということで考 察、実験を続けている訳です。 

当然、BPSやZeovitリアクターの構造や高度下水処理施設や、それから「自然の砂の動きによる、リンを貯蓄するBP 等の発生の可能性」などを参考に考えた、新しい理論も取り入れています。

それから、主にイシサンゴ類が餌としているものとして、低栄養塩下でのプランクトンリッチな自然の環境水では、食性として一番の主が、太陽光に よっての共生褐虫藻の光合成によって生みだされる炭水化物合成成分ですが、その他に目に見えるものとして ポリプによる植物プランクトンや動物プランクトンの摂取、その他にも皮膚からの栄養分の摂取(無機の形での窒素や有機の形での窒素分吸収)が行われている と言われています。

この時に、皮膚から無機窒素の形で吸収される場合には、珊瑚の褐色褐虫藻の栄養に働くと言われ、珊瑚の色の茶色の色が上がると言われているそうです。(脱窒などの窒素放出で弱富栄養水の場合もこれに当たる様です) 
有機の形での窒素やリンなどの栄養摂取(アミノ酸態)は、珊瑚の蛍光色の部分の色上げに働くといわれている為に、観賞の為の珊瑚の色上げには低栄養塩水の環境で、アミノ酸の形で栄養を吸収させるのが色鮮やかな珊瑚の発色に適している様です。

その為にも、タンパク質成分をアミノ酸に分解する代表的な菌でいうところの枯草菌(納豆菌)などで、デトリタスに残された有機物からアミノ酸を生成させるなどの試みも、積極的にデトリタスを利用する濾過形態では望める可能性もある訳です。
この形態の濾過システムを試し見る意図は、低栄養塩環境を作り出すと共に、珊瑚への栄養分摂取の意味も持ち合わせています。

元々、BPというのは、バクテリア添加剤を使わなくとも、自然にその場所にあったBP達が自然に湧いてくるということはアクアリストの方々も ご存じでしょうが、その過程を早める意味でのバクテリア添加剤の使用も無意味なものではありません。
要は、ご自分の水槽に求める浄化能力を持ったBP達を、水槽内に常に存在生存させることで、その水槽内での微生物循環サイクルを完成させようという試みが、我々の考えているところです。

なお 上記の文章は無学な私が、各種インターネットの文献などで調べた知識に、想像を加えた考えで書いておりますので、事実と違うことも書かれている可能性もあるとも思います。 
なので、文章の訂正や、知識の追加を行って頂ける方がありましたら、コメントなどを頂けると嬉しく思います。 (シーホークさん投稿)

追加記事
青字部分の文章は、シーホークさんの許可を得ての修正箇所です。2009/10/31 (Sat)