サンゴの色

シュウさんからのコメントなのですが、コメントにしては勿体無いので皆さんにも情報を分かち合いたく、彼の許可を得て記事にさせて頂きました。
この記事の文章については当方が責任を負うものとします。
シュウさん、有難う御座いました。m(_ _)m(クロネコ)


サンゴの色

サンゴには美しい色彩を持つ物が少なくありません 。
この色彩に魅せられて海水水槽を始めたアクアリストも多いでしょう 。
では、なぜサンゴには色があるのでしょうか?
白化したサンゴをご覧になったことがある人にはわかると思いますが、サンゴには本来色がありません
好日性サンゴの場合は共生する褐虫藻の色がありますが、褐虫藻だけではあの美しい色彩は生まれません。
サンゴは、ある目的のために体の中に色を生成します。

これは、紫外線により生ずる活性酸素から身を守るために色を身に付けるのです。
紫外線殺菌灯からも活性酸素が無脊椎動物にとってどんなに危険な物か?わかると思います 。

サンゴが体内に生成する色の元は、@ 色素たんぱく質 と A  蛍光たんぱく質  に分けることができます 。
色素たんぱく質にはMAAs と呼ばれるアミノ酸が含まれてみます 。
MAAsは、紫外線を吸収する作用と活性酸素に対する抗酸化作用があります 。
蛍光たんぱく質は、紫外線を可視光に変換して無害化し、光が強すぎる場合は反射、光が少ない場合は光合成に利用するようです 。
蛍光たんぱく質で一番多いのが、GFPと呼ばれる紫外線を緑の光に変換するものです。
緑の蛍光色を持つサンゴが好きな人も多いと思います 。
「あれっ?深場のオオバナサンゴも緑の蛍光色を持つけど、緑では葉緑素に利用されにくいんじゃないの?」と思われた方
あなたは洞察力に優れています!(笑)
その理由のヒントは褐虫藻の色にあります 。
もし褐虫藻が陸上の植物のように鮮やかな緑色をしていたら、ここまでアクアリストに嫌われなかったことでしょうね。


パステルカラー

最近、ミドリイシをパステルカラーに色揚げするのが注目されています。
なぜパステルカラーになるのでしょうか?
これは、サンゴに共生する褐虫藻の色が薄くなり、サンゴ自身が持つ色素たんぱく質蛍光たんぱく質の色が強調されるために起こります。
自然の海で強い紫外線にさらされると大量の活性酸素を処理しなければなりません 。
その上、褐虫藻も活性酸素を出すために、これを防ぐのにサンゴは褐虫藻へのアンモニア供給を制限して体外に排出してしまいます。
超貧栄養の自然海でこれが起こると褐虫藻は窒素源を失い衰退してしまいます 。
これにより褐虫藻の色は薄くなりサンゴはパステル化します 。

この状態を水槽内で維持するのは容易なことではありません 。
いくら貧栄養と言っても水槽の水は自然の海に比べればずっと富栄養だからです。
もしかしたら過剰な紫外線を当てれば水槽内でもパステル化が起こるかもしれません(照明強化によりパステルカラーを維持している水槽はあると思います。) が、これも光量の調節とコスト面から容易とは言えないと思います 。


ZEOvitについて

このパステルカラーを実現できるシステムが注目されています 。
ZEOvitです 。
しかし、まだなぜZEOvitによりパステル化が起こるのか説明できる人は少ないと思います 。
たとえ、BPシステムを使い貧栄養状態にしても、あのパステルカラーにはなかなかならないと思います 。
これはあくまでも個人的意見で推察ですが 、活性酸素を利用している可能性があります 。
前にも述べた通り活性酸素がコントロールできれは褐虫藻のコントロールもできると思われるからです。

今後、情報が増えればZEOvitの正体も明らかになると思いますが 、いろいろ推理するのも楽しいものです。(笑)

(シュウさん投稿)

2009/11/09 (Mon)



植物の色

サンゴ同様、植物の色にも理由があります。
美しい花の色は交配のために虫を呼び寄せるために作られます。
草木の緑はもちろん光合成のために使われます。
光合成は光をエネルギーに変換しますから光を吸収しなくてはなりません。
光が吸収されれば必ず色になります。

光合成色素

光合成に使うために光をキャッチするもの光合成色素と呼びます。
陸上の植物のほとんどが光合成色素にクロロフィル(葉緑素)を使います。
クロロフィルが使われる理由は、その反応速度とエネルギー効率の良さからです。
しかしクロロフィルにも欠点があります。
吸収する波長が赤と青に偏ってしまうんです。
特に赤い波長を吸収します。
吸収できない緑の波長はクロロフィルからの反射として外にでてしまいます。
植物が鮮やかな緑に見えるのはこの理由からです。
もしクロロフィルがすべての波長を吸収できたとしたら、植物は黒い色になっていたはずです。

海の色

海の中は青い。
誰もが知っていると思います 。
これは水が長い波長の光を吸収してしまい光の波長は短い方に偏るからです。
つまり青い世界となります。

これは赤い光をエネルギーにしやすいクロロフィルにとっては不利になります。
つまり陸上では光合成色素として最適なクロロフィルが必ずしも有利とは限りません。
このため海中の植物は他の光合成色素も利用します。
紅藻やシアノバクテリアなフィコビリンを利用しますし
褐虫藻を含む褐藻はフコキサンチンをクロロフィルと一緒に利用します。
このフコキサンチンが最も吸収する光が緑色の光です。
赤い光の少ない海中では青い光を利用するクロロフィルと緑の光を利用するフコキサンチンを褐虫藻は光合成色素として利用します。
これにより褐虫藻を緑の光も吸収しますので植物なのに緑色に見えないわけです。

つまりGFPにより緑に変換された光も褐虫藻は光合成に利用できるんです。

(シュウさん投稿)
2009/11/10(Tue)