低比重治療法による弊害

たまたま、あるサイトにて低比重治療法の事が話題になり、これによる弊害の報告があった様です。
私は、
基本的にヤッコ類にはあまりお勧めしていませんし、むしろ、必要ない様に思います。
その理由としてはチョウ類に比べて比較的丈夫である為、白点に
罹り悪化する状態では相当弱っていると見て良いからです。
もし、低比重を使うなら淡水浴より注意が必要です。
と言うのも、同じ水槽でチョウ類は白点が付きヤッコ類には白点が付かないと言う現象を見て来ました。
ですから、私なりの指標を作ってみました。
その方が分かり易いでしょうが、あくまでも独断である事を付け加えておきます。

レベル0 → 本水槽内に、チョウチョウウオ達が全く白点虫がついていない状態
レベル1 → 特定のチョウチョウウオに白点虫が取りつき、他のチョウには取り付いていない状態
レベル2 → すべてのチョウに取りつき、ヒレのみについている状態
レベル3 → すべてのチョウに取りつき、体全体を白点虫が取りついている状態
レベル4 → すべてのチョウに取り付いているが、ヤッコ類には取り付いていない状態
レベル5 → ヤッコ類に取り付いているが、ヒレのみの状態
レベル6 → ヤッコ類に取りつき、体全体を白点虫が覆っている状態
レベル7 → すべての生体に白点虫が取り付いている状態

この様に、レベル7に行くほど重症になり、上へ行くほど軽症になります。
これらは、水槽内に珊瑚や甲殻類 と共存し、マジカルウォーターや40w殺菌灯を使用したり、白点虫除去フィルター等を使用した場合の指標です。
ですから、皆さんの水槽に当てはまるとは限りません。
ただ、ここで力説しておきたいことは、水槽内ではヤッコ類にも白点虫が付き苦しむ様な状況であれば、相当蔓延して重症であると判断して良いと言う点です。
そうなった時には、残念ながら本格的な白点治療が必要になりますが、ここでは治療については詳しく触れません。

従って、チョウ類とヤッコ類等の生体が共に水槽内に居る場合、これらの生体を観察する事により水槽内に白点虫がどれくらい蔓延しているか?どうか?
その状況の判断の目安となる様です。
つまり、チョウ類に白点が付いており「レベル1〜3」、ヤッコ類には付いていないと言う状況であれば、それほど蔓延している訳ではないと言う判断をしても良いでしょう。
と言うのも、生体の水槽導入直後に発生した白点は猛威を振るいすべての生体に付くなどの「レベル5〜7」がありますが、水槽内での環境変化に伴って発生した時にぶり返す白点の状態が比較的軽く、この時はヤッコ類はなんとも無くチョウ類には比較的軽微と言う「レベル3〜4」状態で、40w殺菌灯や白点虫除去フィルター等の使用による「レベル2〜0」に治癒する事を経験して来ました。
この事は、珊瑚水槽ではヤッコ類は飼えたのにチョウ類を入れると白点が蔓延し、生体が全部全滅したと言う経験をされた方もいらっしゃると思います。

それ位、ヤッコ類はチョウ類に比べて比較的丈夫なのです。

さて、本題の低比重治療法に関する弊害ですが、
言い忘れたことがありました。
皆さんは、低比重にしていく時に比較的水温に対して注意すると思いますが、pHに対してはどうなのでしょうか?
と言うのも、低比重にすると言うのはpH8.3の海水に対して、くみ出したばかりのpH6.5〜6.8位の水道水を入れるのが一般的ではないでしょうか?
これはくみ出したばかりの水道水が炭酸ガス(二酸化炭素)の充填・溶け込みによりpH値が下降するためです。
但し、pH8.3と言うのは天然海水などの一般的なpH値ですが、リーフ水槽のpH値も大体それ位です。
これらの海水は、全般的に低硝酸塩濃度か、もしくは試薬でも硝酸塩が検出されない位の貧栄養状態の海水のレベルです。
嫌気濾過の付いていない、もしくは飼育数の多い水槽では高濃度の硝酸塩とリン酸塩、有機酸が溜まる事によってpH値がかなり低下していると思います。
そう言った海水にpH6.5〜6.8位の水道水を入れる訳ですから、pH値が更に低下していると思います。
低比重にする事によるpH低下が、その影響を病魚が被る事もあり得るのではないかと思います。
ですから、低比重にする水槽はデトリタスなどの有機物の少ないベアータンクが好ましいのです。
当方では低比重にする際に必ず
バッファー対策として水酸化カルシウム溶液を入れてpH低下を防いでいました。
たとえ淡水浴でも、水温とpH合わせを必ず行う様に言われていますが、この場合は比較的健康な魚に限られ、病魚にはしない方が良い様です。
低比重では何故かpHの事を注目されていない様な印象を受けていますが、皆さん如何でしょうか?
アメリカの本家本元でも病気の魚に対するpH低下については、水温と共に監視する様に注意されています。
                   ↓
http://atj.net.au/marineaquaria/hyposalinity.html

もう一度このサイトをお読み下さい。
又、治って比重をもとに戻す際に伴うpH値の上昇にもお気をつけてください。

更に、獣医師である「いんちょさん」http://aqua.yukigesho.com/のサイトで、下記の内容が紹介されていました。
面白い内容ですので、一読の価値があります。
         ↓
<免疫賦活物質とは何か>
http://grwww004.pref.tokushima.jp/suisan/zoyo/zoyo_topic009.html


又、 岡山理科大学専門学校が開発した「好適環境水」があり、この好適環境水を使用しますと淡水魚と海水魚を一緒に飼育出来る様です。
この事をこのページで御紹介させて頂いたのは、養殖は普通であれば病気が発生しやすいという問題がありますが、病原体は海水型と淡水型のどちらかに分かれて居る為、上記方法であれば、いずれの病原体とも生息出来ない様なのです。
その為、病原体が死んで病気が治ってしまうとの事、薬に頼らない養殖が可能な様です。

この「好適環境水」がどうして出来たのか?話をまとめれば、以下の通りです。

海水魚と淡水魚は正反対の浸透圧の調整を行っているので、普通は一緒に暮らせない様ですが、進化をさかのぼればどちらも祖先は太古の海で生きていたはずで、いまほど塩辛くなく単純な成分だった為に、浸透圧の調整も必要なかったと考えられるとの事。
そこで 岡山理専は、太古の海に着目し現在の海水に含まれる成分はおよそ60位ですが、その中から魚にとって 本当に必要な成分は「カリウム」「ナトリウム」、その他数種類の成分だけということが分かったそうです。
そして、この好適環境水なら浸透圧の調整が必要ないので、エネルギーが少なくて済みその分成長が速くなるそうです。

以上ですが、浸透圧の調整が必要無くエネルギーが少なくて済むと言う事は、魚にとっては負担が少なく、輸送で疲れた魚の治癒も早いと言う事も考えられます。
今後は、海水魚の治療にもこの好適環境水で治して行く事も考えられる様です。
こうして、時代は変わって行きますね。
上記の参考資料
    ↓
http://www.mainichi-msn.co.jp/kansai/archive/news/2007/01/06/20070106ddn012040002000c.html
http://www.tv-asahi.co.jp/earth/midokoro/2007/20070121/